むくみや水太り、多汗症などに効果がある漢方薬として知られている「防已黄耆湯」。特に女性は筋肉が少なく、むくみやすいため「夕方になると脚がパンパン」「水太りをどうにかしたい」とお悩み方も多いのではないでしょうか。
今回は医薬品登録販売者監修のもと、防已黄耆湯の効果や防風通聖散との違い、副作用から飲み方まで解説していきます。
目次
防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)は、下半身などのむくみや水太りによる肥満症などで用いられる漢方薬です。
漢方では、体の中を「気(エネルギー)」「血(血液)」「水(無色の体液)」が巡っていると考えます。「気」が不足すると、「水」を巡らせる力が低下し溜まることでむくみなどを引き起こします。
防已黄耆湯は「気」を補い、胃腸の働きを高めるとともに、余分な「水」の排出を促す作用がある医薬品です。
▼気・血・水の3要素
防已黄耆湯には、以下の6つの生薬が配合されています。
防已黄耆湯は、“主薬の防已と黄耆を含んだ湯液(煎薬)”が名前の由来です。
防已はツヅラフジ科オオツヅラフジのつる性の茎および根茎を乾燥したもの。黄耆はマメ科キバナオウギの根を乾燥したものになります。
▼防已(ボウイ)
▼黄耆(オウギ)
防已黄耆湯は水の巡りを良くすることでむくみを改善し、水分代謝の低下による下半身の肥満に効果が期待できます。
また、多汗症の改善にも効果があり、体内の水分バランスを整えることで汗を抑える作用があります。
その他にも、水分が抜けづらくなったことによる関節の痛み・腫れにも効果が期待でき、関節症の第一選択となる漢方処方としても知られています。
防已黄耆湯の効果を実感するまでの期間は、もともとの体質によって個人差がありますが、おおよそ3~4週間程度で体の変化が見られることが多いとされています。まずは最初のサインである、1日のトイレ回数や尿量など「利尿のサイン」を観察してみましょう。
漢方薬は西洋薬と違い、根本から改善を目指し、多様な症状に働きかけます。多くの漢方薬は効き目がゆっくりなため、継続してきちんと服用することで、防已黄耆湯の効果がより実感しやすくなります。
ただし、1ヵ月くらい服用しても効果が何も感じられない場合は服用を中止して、医師、薬剤師または登録販売者に相談してください。
防已黄耆湯は、次のような体質や症状でお悩みの方におすすめの漢方薬です。
漢方薬は同じような効果が期待できるものでも、適している体質や症状(漢方医学で「証」と呼ばれるもの)が異なり、自分の体質に合っていないと効果が感じにくくなります。
例えば、同じ肥満症でも、体力があり、皮下脂肪が多く、便秘がちな方は防風通聖散が選択肢となります。次では、防已黄耆湯と防風通聖散の違いについて紹介します。
防已黄耆湯と防風通聖散は、どちらも排出を促す作用があり肥満症の改善に効果がある漢方薬ですが、適している体質や症状が異なります。
防已黄耆湯は体力が低下している方、色白で汗をかきやすく、筋肉にしまりがない、いわゆる「水太り」タイプの方に適しています。水分代謝の低下が原因の下半身肥満に効果的といわれています。スポーツをしている筋肉質の方は、防已黄耆湯の「証」には当てはまりません。
一方、防風通聖散は体力があり食欲旺盛、太鼓腹で便秘がちな「脂肪太り」タイプの方に適しています。便通を促し、体内の熱を冷まして、余分な脂肪を分解・燃焼する効果があります。
漢方薬を選ぶときは、ご自身の体質や症状に合っているかがポイントです。迷ったときは医師や薬剤師、販売登録者に相談しましょう。
漢方薬は西洋薬と比べて作用が穏やなため、副作用は比較的少ない傾向にあります。とはいえ、体質や体調によっては副作用が現れる可能性があります。
防已黄耆湯を服用して、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので服用を中止し、説明書や本品を持って医師や薬剤師または登録販売者に相談しましょう。
| 関係部位 | 症状 |
|---|---|
| 皮膚 | 発疹・発赤、かゆみ |
| 消化器 | 食欲不振、胃部不快感 |
まれに、間質性肺炎や肝機能障害のような症状が起こることがあります。その場合は、医師の診察を受けるようにしましょう。
防已黄耆湯を服用する際は、決められた用法・用量を守って正しく服用してください。次の人は服用前に医師、薬剤師または登録販売者に相談しましょう。
また、防已黄耆湯に含まれる甘草(カンゾウ)はほかの漢方薬にも含まれることがあり、飲み合わせによっては1日の適正量を超えてしまう可能性があります。
ほかの漢方薬や薬と一緒に飲む場合は、服用前に飲み合わせについて必ず医師や薬剤師、または登録販売者に相談するようにしましょう。
防已黄耆湯を飲むタイミングは、食前または食間(食事と食事の間で、前の食事から2~3時間後のこと)がよいでしょう。食後に飲む場合も問題はありませんが、空腹時の方が素早く吸収されると考えられており、食後2〜3時間後がおすすめです。
もし飲み忘れた場合は、2回分をまとめて飲むことはせず、次の服用を4時間以上あけてください。
漢方薬を服用するときは、水か白湯で飲むのが基本。独特な味や香りが気になる場合は、あらかじめ少量の水や白湯を先に口に含んでから、漢方薬を口に入れて一緒に飲み込むと、口の中に味が残りにくくなりおすすめです。
防已黄耆湯の効果をきちんと発揮するためにも、用法・用量を守って正しく服用しましょう。
水太りやむくみは、日々の生活習慣が大きく関係しています。中医学の基本となる「養生」で心身を心地よく整えることは、防已黄耆湯の効果を後押ししたり、不調の予防にもつながります。ここでは、毎日気軽に実践できる養生アイディアを紹介します!
水太りの人は筋肉量が相対的に少ない傾向があります。運動は無理なく続けられる範囲で、少しずつでも運動習慣を取り入れるように心がけましょう。
ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動は、血行が促進され、水分の排出が盛んに行われるようになり、むくみや水太り対策に効果的です。
また、スクワットのような下半身の筋肉を鍛える筋力トレーニングも〇。下半身の筋肉は血液やリンパの流れを助ける重要な役割を担っているため、水分代謝の改善につながります。
長時間同じ姿勢でいると血行が悪くなり、むくみの原因に。1~2時間に1回を目安に、ふくらはぎを伸ばしたり、足首を回すなどの軽いストレッチがおすすめです。
また、体が温まっているお風呂上りは、老廃物や水分が流れやすく、マッサージのベストタイミング。ストレッチポールを使ってふくらはぎをほぐすのも効果的です。
塩分の摂りすぎはむくみの原因のひとつ。血液中の塩分濃度が高まると、塩分を薄めようとして体が水分を溜め込んでしまいます。塩分を減らす工夫や、塩分を排出する食べ物を積極的に摂るように心がけましょう。
サラダでよく使うドレッシングは塩分が多くなりがち。レモンなどの柑橘系やお酢、ブラックペッパーなどのスパイスで風味を足して、ドレッシングを控えめにしてみましょう。
また、つい使いがちな醤油やソース、めんつゆなどの量を控えめにして、代わりに出汁や薬味、スパイスなどを活用すれば塩分を減らしても気になりにくくなりますよ。
インスタント食品やハム、ソーセージなどの加工食品も塩分が多くなりがちです。なるべく避けるか、摂取量を減らすように心がけて。食べる場合は、一度茹でて塩分を減らす工夫も〇。
カリウムには、体内の余分な塩分を尿として排出する働きがあります。塩分の摂りすぎが気になるときは意識して食べるとよいでしょう。
カリウムは野菜や果物、肉などにも含まれていますが、水溶性のため生で食べられる野菜や果物がおすすめ。
防已黄耆湯と防風通聖散では、適した体質が異なります。むやみに併用すると、効果が重複したり、予期せぬ副作用が現れる可能性があります。自分がどちらのタイプか見極めて選ぶか、医師や薬剤師、または登録販売者に相談するようにしましょう。
防已黄耆湯には体内の余分な水分を排出しやすくし、むくみを改善する効果があります。結果的に水分が減少して痩せたように見える可能性はありますが、ダイエット目的のための痩せ薬ではありません。
ダイエットを行う場合は、食事を見直したり運動をするなど、生活習慣を見直した上で、肥満症などの症状・体質に応じて適切に服用しましょう。
防已黄耆湯は溜まった水分を排出することでむくみを改善し、水太りによる肥満症、多汗症、関節の腫れ・痛み改善などに効果があります。
体質だからとあきらめず、不調にお悩みの場合は漢方薬の助けを借りるのも手。気になることがあれば、医師や薬剤師、または登録販売者などの専門家に相談してみてくださいね。