「イライラしたり、気分が落ち込みやすい」「のぼせる…でも冷える」そんな心と体に現れる不調を改善してくれるのが加味逍遙散(かみしょうようさん)です。特に、PMS(月経前症候群)※や月経不順、更年期障害など女性特有のお悩みに寄り添う漢方薬としても知られています。
今回は医薬品登録販売者監修のもと、加味逍遙散の効果や副作用、飲み方から養生のポイントまで詳しく解説していきます。
※血の道症にはPMS(月経前症候群)が含まれます。
目次
加味逍遙散(かみしょうようさん)は、女性特有の心や体の不調を改善してくれる医薬品です。「婦人科三大処方」と呼ばれる漢方薬のひとつで、月経関連症状や更年期障害、冷え症などの症状によく用いられます。
漢方では心身の不調を「気」「血」「水」という人体を構成する3つの概念で言い表します。加味逍遙散は「気」の巡りを良くし、「血」を補い、体内の熱を冷ますことで、心身のバランスを整えてさまざまな不調を改善するお薬です。
▼気・血・水の3要素
加味逍遙散には10種類の生薬が配合されています。
加味逍遙散は「逍遙散」と呼ばれる漢方処方に、生薬の牡丹皮と山梔子を加えた漢方薬です。
牡丹皮はボタンの根皮を乾燥したもの、山梔子はクチナシの果実を乾燥したものになります。山梔子は適度に熟して、赤く鮮やかなものが良いとされています。
▼牡丹皮(ボタンピ)
▼山梔子(サンシシ)
加味逍遙散は乱れがちな女性ホルモンのバランスに働き、自律神経を調整、さらに血行を促進することで、女性特有の心と体に現れるさまざまな不調を改善します。
効果・効能は以下の通りです。
「血の道症」とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモン変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことで、PMS(月経前症候群)も血の道症に含まれます。
PMS(月経前症候群)とは?
月経(生理)の3~10日前にさまざまな精神的・身体的不調が生じ、月経が始まるとおさまるのが特徴です。症状はイライラや精神不安、肌荒れ、頭痛、下腹部の痛み、めまい、眠気などで、人によっても月によっても違いがあります。
原因ははっきりとはわかっていませんが、ホルモンバランスの乱れやセロトニン(脳内神経物質)の不足などが考えられると言われています。
もともとの体質や生活環境によって効果の出方が異なるため、個人差があります。
月経前や月経中の気になる症状が現れたときのみの服用でも効果が感じられる場合は、その期間の服用で問題ありません。月経不順でお悩みの場合は、月経周期を考慮してしばらく飲み続けてみましょう。
ただし、1か月くらい服用を続けても効果が何も感じられない、あるいは悪化する場合は、医師や薬剤師または登録販売者に相談してください。
加味逍遙散は、次のような体質や症状の方におすすめの漢方薬です。
漢方薬は同じような効果が期待できるものでも、適している体質や症状(漢方医学で「証」と呼ばれるもの)が異なり、自分に合っていないと効果が感じにくくなります。
逍遙散は「気」を巡らせる薬に「気」と「血」を補う薬を加えたもので、そこに熱をとる薬を加えたものが加味逍遙散です。そのため、のぼせがあるイライラには加味逍遙散、のぼせがないイライラには逍遙散が向いています。
このように、漢方薬を選ぶときは体質や症状に合っているかがポイントです。迷ったときは医師や薬剤師、販売登録者に相談しましょう。
一般的に、西洋薬と比べ漢方薬の作用は穏やかで、副作用は少ない傾向にあります。とはいえ、体質や体調によっては副作用が現れる可能性があります。
加味逍遙散を服用して、皮膚に発疹やかゆみ、吐き気、胃の不快感などがある場合は副作用の可能性があるので服用を中止し、医師や薬剤師または登録販売者に相談しましょう。
非常にまれですが、下記の重篤な症状が起こることがあります。その場合は、直ちに医師の診察を受けてください。
| 症状の名称 | 症状 |
|---|---|
| 肝機能障害 | 発熱、かゆみ、発疹、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、褐色尿、全身のだるさ、食欲不振等があらわれる。 |
| 腸間膜静脈硬化症 | 長期服用により、腹痛、下痢、便秘、腹部膨満等が繰り返しあらわれる。 |
持病がある人(特に高血圧、心臓病、腎臓病など)、医師の治療を受けている人、妊娠または妊娠と思われる人、胃腸の弱い人は、服用する前にかかりつけの医師に相談しましょう。
また、2種類以上の薬の併用は思いがけない相互作用が現れたり、効果が弱まることがあります。飲み合わせについては医師や薬剤師、または登録販売者に相談してください。
漢方薬は基本的に、水または白湯で服用しましょう。
錠剤に比べて味や香りを感じやすい顆粒タイプを飲む場合は、あらかじめ少量の水や白湯を口に含んでから、漢方薬を口に入れて一緒に飲み込むと、口の中に残りにくくなりおすすめです。
一般的に、漢方薬を飲むタイミングは、食前や食間が効果的とされています。これは、胃の中に食べ物が入っていない状態で飲んだほうが、薬の吸収が良くなると考えられているためです。
| 服用タイミング | 目安の時間 |
|---|---|
| 食前 | 食事の約30分前 |
| 食間 | 食事と食事の間 (食後2時間くらい) |
食後に飲んでも問題はありませんが、より効果的な飲み方としては食前か食間がおすすめです。
飲み忘れてしまった場合は、気がついた時点で1回分を服用しましょう。飲み忘れたからといって、2回分をまとめて飲むことはしないでください。
ただし、次に服用する時間が近い場合は、忘れた分は飲まずに、次の服用時間になったら1回分だけ飲むようにしてください。
生漢煎 加味逍遙散錠SZの場合、前回の服用から6時間空いていれば飲んでも構いません。漢方薬の効果をきちんと発揮するためにも、用法用量を守って正しく服用しましょう。
ドラッグストアや通販などで販売されている市販の加味逍遙散には、主に2種類の剤形があります。それぞれの特徴をおさえて、自分に合った漢方薬を選びましょう。
漢方では苦みや香りも薬効の一部と考えられており、漢方薬の効果をしっかり感じたい方には顆粒剤がおすすめです。
顆粒剤は湿気を吸いやすいため、密閉容器かチャック付の袋に入れて保管すると良いでしょう。個包装タイプなら保存しやすく持ち運びにも〇。
苦みや香りが苦手な方には錠剤がおすすめ。顆粒剤と違い薬が口に残らず、漢方薬を初めて飲む方でも飲みやすいのが特徴です。
錠剤は軽量でかさばらず、湿度の影響も受けにくいため長期保存にも適しています。
中医学の基本となる「養生(ようじょう)」で心身を心地よく整えることは、漢方薬の効果を後押ししたり、予防にもつながります。ここでは、すぐに始められる養生のポイントをご紹介します。
質の高い十分な睡眠は、心身の健康を保つための最も基本的なセルフケアです。睡眠不足は、自律神経の乱れ、ホルモンバランスの崩れ、免疫力の低下など、様々な不調を引き起こします。これらは、加味逍遙散が作用する症状と深く関連しています。
質の高い睡眠をとるために、以下の点を意識しましょう。
睡眠には、上手な体温調整と就寝前のリラックスが重要。深部体温が下がると体は入眠モードになります。体に熱をためないように、入浴は就寝の1~2時間前に済ませましょう。
アルコールは睡眠を浅くするので就寝の2時間前まで。カフェインを含む飲み物は、夕方以降は控えましょう。寝る前はホットミルクやハーブティーなどをゆっくり飲むと〇。
また、寝る前にストレッチで体をほぐしたり、好みの香りのアロマで気分を落ち着けたりするのもおすすめです。
適度な運動は、自律神経のバランスを整え、心身のリフレッシュ効果が期待できます。血行促進にも繋がり、冷えの改善にも役立ちます。
また、早足のウォーキングやジョギングのような、有酸素運動を習慣的に行うことで寝つきが良くなり、深い睡眠も増加することが分かっています(※1)。
1日60分以上の運動がよいとされていますが、最初は短くてもよいので運動をする習慣を身に着けていきましょう。
ウォーキング、室内運動、筋力トレーニングなどを、息が弾んで軽く汗をかく程度の強さで行うと効果的です。
※1 参考文献:厚生労働省 健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~
冷えを放っておくと月経不順や生理痛、むくみ、肩こり、便秘、関節痛など、さまざまな不調につながります。特に、更年期以降は体温調節機能を担う自律神経の変調によって、より冷えを生じやすくなります。
入浴はシャワーだけですませるのではなく、湯舟に浸かって体を内部から温めましょう。血行がよくなりストレス解消効果も。入浴後の水分補給は体を冷やさないよう、できるだけ常温以上のものを心がけて。
加味逍遙散と当帰芍薬散は、どちらも女性の不調によく用いられる漢方薬で、作用機序が異なるため、併用されるケースもあります。
ただし、構成生薬数が多くなると効果が薄れる場合があります(※2)。そのため、併用する場合は必ず医師や薬剤師、または登録販売者に相談するようにしましょう。体質や症状によっては、相性が良くない場合や、副作用のリスクを高める可能性も考えられます。専門家のアドバイスのもと、適切に服用することが大切です。
※2 参考文献:漢方薬を複数処方する場合に,注意が必要な生薬は?|日本医事新報社
加味逍遙散は「女性のための漢方薬」というイメージが強いですが、男性が服用しても問題ありません。
日本泌尿器科学会によると、極端な証の偏りがない場合は、男性更年期障害(LOH症候群)の治療に対して、神経症に効果がある加味逍遙散が有用なケースもあるとしています(※3)。
※3 参考文献:日本泌尿器学会 LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き
植物など天然素材の生薬を原料とする漢方薬は種類も豊富で、体質改善の働きをするため、症状が多岐にわたる更年期症状や月経関連症状に効果を発揮します。
なかでも加味逍遙散は、女性特有の症状や心身の不調に用いられる代表的な漢方薬。PMS※や更年期症状、イライラなどの精神神経症状、不眠症、冷え症など、さまざまな症状の改善が期待できます。
ある程度続けてこそ効果が得られるので、まずは継続してみることが大切。効果・効能や飲み方など、もし気になることがあれば医師や薬剤師、または登録販売者などの専門家に相談してみてくださいね。
※血の道症にはPMS(月経前症候群)が含まれます。